一 文字・語彙

問題I 次の文の下線をつけたことばは、どのように読めますか。その読み方をそれぞれの1・2・3・4・から一つ選びなさい。 

1 裁判の経緯を見ていると、両者に譲歩の姿勢は全くなく、争い泥沼様相を呈している。

(1) 経緯 1 けいか    2 きょうか  3 けいい   4 きょうい

(2) 譲歩 1 じょうほ   2 じょうほう 3 じょうふ  4 じょうぶ

(3) 争い 1 さそい    2 たたかい  3 うばい   4 あらそい

(4) 泥沼 1 でいしょう  2 どろしょう 3 でいぬま  4 どろぬま

(5) 様相 1 ようそ    2 ようそう  3 ようしょう 4 ようす

2 機械が故障するとすぐ廃棄物扱いをする近年の悪癖解消するには、国民の生活意識を根底から問い直す必要がある。

(1) 故障 1 こしょ    2 こうしょ  3 こうしょう 4 こしょう

(2) 廃棄物1 はいきぶつ  2 はきぶつ  3 はっきぶつ 4 はつきぶつ

(3) 悪癖 1 わるくせ   2 わるヘき  3 あくヘき  4 あっくせ

(4) 解消 1 かいしょ   2 かいしょう 3 げしょ   4 げしょう

(5) 根底 1 こんてい   2 こんでい  3 ねそこ   4 ねぞこ

3 八月半ば、高原には早くも秋の気配漂い始め、色とりどりの草花が夏の名残惜しんでいる。

(1) 気配 1 きはい    2 きばい   3 けはい   4 けばい

(2) 漂い 1 さまよい   2 ただよい  3 うるおい  4 よそおい

(3) 草花 1 くさか    2 そうか   3 そうはな  4 くさばな

(4) 名残 1 なごり    2 なのこり  3 めいさん  4 めいざん

(5) 惜しんで  1 かなしんで      2 さびしんで

        3 おしんで       4 あやしんで

問題II 次の文の下線をつけたことばは、ひらがなでどう書きますか。同じひらがなで書くことばを1・2・3・4から一つ選びなさい。

(例) あの先生の講義はたいへんおもしろい。

 1 合議  2 後記  3 抗議  4 公示

例の文の下線のことばは、ひらがなで「こうぎ」と書きます。1~4のことばはそれぞれ、1は「ごうぎ」、2は「こうき」、3は「こうぎ」、4は「こうじ」と書きます。例の文「こうぎ(講義)」と、3の「こうぎ(抗議)」はひらがなで同じ書き方ですから、正解は3です。

 (解答用紙)(例)   ●      

(1) この会社は多額の負債に苦しんでいる。

  1 不在  2 夫妻  3 風習  4 封鎖

(2) 再三注意したが、彼は聞く耳を持たなかった。

  1 採算  2 最善  3 整然  4 財産 

(3) こんなことで意地を張っても無駄だ。

  1 位置  2 一致  3 維持  4 異議

(4) 顕微鏡で雪の結晶を見る。

 1 化粧  2 決勝  3 傑作  4 欠席

(5) 二つの勢力は均衡を保っている。

  1 金庫  2 近郊  3 機構  4 緊急

問題III 次の文の下線をつけたことばは、どのような漢字を書きますか。その漢字をそれぞれの1・2・3・4から一つ選びなさい。

1 彼の行為は規則いはんだと一時ひなんされたが、じじょう調査の結果、むしろせいとうな行為であるとみとめられた

(1) いはん   1 異判  2 異反  3 違判  4 違反

(2) ひなん   1 避難  2 非難  3 否難  4 被難

(3) じじょう  1 時状  2 事状  3 事情  4 時情

(4) せいとうな 1 正到な 2 正答な 3 正等な 4 正当な

(5) みとめられた 1 許められた      2 識められた

         3 認められた      4 譲められた

2 だいきぼなさいがいそくざに対応できるたいせいけんとうされている。

(1) だいきぼな 1 大規模な 2 大基模な 3 大規漠な 4 大基漠な

(2) さいがい  1 砕害   2 災害   3 催害   4 最害

(3) そくざに  1 則座に  2 速座に  3 即座に  4 促座に

(4) たいせい  1 態勢   2 帯勢   3 態整   4 帯整

(5) けんとう  1 見当   2 見討   3 検当   4 検討 

3 夜更けのはまべひとかげはなく、ただ、おきぎょせんあわい月の光にかすかに見えるだけであった。

(1) はまべ   1 海辺   2 海部   3 浜部   4 浜辺

(2) ひとかげ  1 人陰   2 人隠   3 人影   4 人像

(3) おき    1 沖    2 浦    3 湾    4 潮

(4) ぎょせん  1 漁舟   2 魚船   3 漁舟   4 漁船

(5) あわい   1 濃い   2 淡い   3 清い   4 渋い

問題IV 次の文の下線をつけたことばの二重(__)の部分は、どのような漢字を書きますか、同じ漢字を使うものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。

(例) 工場の機械のはいちを変えるため、一週間操業を停止する。

1         お手紙、はいけんしました。

2         たいしたことありませんから、しんぱいしないでください。

3         工場のはいすいによって、川が汚染されている。

4         パーティーのはじめにかんぱいします。

例の文の下線のことばは「配置」と書きます。1~4のことばはそれぞれ、1は「拝見」、2は「心配」、3は「排水」、4は「乾杯」と書きます。例の文の「配置」の「はい」と、2の「ぱい」は同じ漢字ですから、正解は2です。

(解答用紙)(例)  ●      

(1) 青年は常にりそうを追い求めなければならない。

1         会社にりれきしょを送った。

2         夏休みにはいつもきょうりに帰ることにしている。

3         彼はちょうしの免許を持っている。

4         この会社は主に輸出によってりじゅんをあげている。

(2) 経済発展をそくしんさせる政策を優先する。

1         彼は外国に渡ったまま、しょうそくが絶えた。

2         道路工事のためのそくりょうが始まった。

3         友人から借りていたお金の返済をさいそくされた。

4         はじめのげんそくどおりに仕事をすすめよう。

(3) 選挙が近いので、がいとうで演説をしている。

1         会議の結果はこうとうで伝えることにした。

2         技術開発は高いレベルにとうたつしている。

3         歴史とでんとうを尊重する。

4         不景気でとうさんする会社が続出している。

(4) せいふくを着た高校生が歩いている。

1         新しいせいとうを支持する。

2         このラジオはせいのうがよくて有名だ。

3         輸入品の価格のとうせいがゆるめられた。

4         裁判官はこうせいな判断を下した。

(5) 彼は本社から大阪の支店にてんきんになった。

1         あまりきんちょうすると体によくない。

2         学校を設立したいがしきんが足りない。

3         研究室の図書の持ち出しはげんきんする。

4         彼は驚くほどきんべんな学生だ。

問題V 次の文の__の部分に入れるのに最も適当なものを、1・2・3・4からを一つ選びなさい。

(1) このスープは塩__がむずかしい。

  1 場合  2 調子  3 加減  4 都合

(2) 田中さんの結婚パーティーは、とても__だった。

  1 なごやか  2 ゆるやか  3 おろそか  4 しなやか

(3) 知らない漢字でも、その部首を見て意味を__できることがある。

  1 予知  2 予言  3 推進  4 類推

(4) 山田さんは、きょうのこの会のために、__遠くから来てくださいました。 

  1 たっぷり  2 わざわざ  3 じっくり  4 つくづく

(5) けがをしたが、その場ですぐ__処置をしたので、大事にはいたらなかった。

  1 救援   2 救助   3 応急   4 応援

(6) 仕事の__にほかの用事をすませました。

  1 合間   2 手間   3 空間   4 仲間

(7) これは重さの割に__荷物だ。          

  1 かせぐ  2 かさばる 3 かすむ  4 かぶれる

(8) 最近の青少年はしっかりしているようだが、精神的に__面がある。     

  1 しぶい  2 だるい  3 ゆるい  4 もろい

(9) 首相の軽率な発言で、良好であった両国の関係が__。

  1 きずきはじめた             2 きたえはじめた

  3 きしみはじめた             4 きざみはじめた

(10) 堀さんは__が広いから、それについての専門家を紹介してもらうといい。

  1 くち   2 かお   3 まゆ   4 みみ

(11) 非常時には、__行動が要求される。

  1 切実な  2 敏感な  3 迅速な  4 頻繁な

(12) 年をとったせいか、なにをするのも__。

  1 まざらわしい  2 なやましい  3 みすぼらしい  4 わずらわしい

(13) 鈴木さんは__がいいから、どんな洋服でもよく似合う。

1         スタイル 2 スマート 3 ストップ 4 スタミナ

(14) 人間関係でこんなに苦労するなら、__この会社をやめてしまおう。

1         いっこうに 2 いっしんに 3 いったい 4 いっそ

(15) 政府が、この問題にどう__するか注目される。

  1 対面   2 対比   3 対処   4 対等

問題VI 次の(1)から(10)は、ことばの意味を説明したものです。その説明に最もあう用例を1・2・3・4から一つ選びなさい。

(1) たつ……ある位置に身を置く。

1         大阪へたつ目をお知らせてください。

2         人の上にたつものは、責任ある行動をとらなければならない。

3         この空き地には図書館がたつ予定です。

4         あの人は弁がたつ。

(2) きつい……感覚に与える刺激が強い。

1         仕事が遅れたので、かなり日程がきつい。

2         すもうのけいこがきついことはよく知られている。

3         あの人は一見やさしそうだが、相当きつい性格だ。

4         こう香水は、においがかなりきつい。

(3) 気……性質、性格

1 彼はとても気が強い。

2 仕事をやめたら気が抜けてしまった。

3 彼はなかなかよく気がつく。

4 その仕事はあまり気が進まない。

(4) 腹……本心、意図

1 あまりおかしいので、腹を抱えて笑った。

2         原がへっていては、なにもできない。

3         あいつの腹はなかなか読めない。

4         昨日の失敗を思い出すと、自分で自分に腹が立つ。

(5) 立場……判断するためのよりどころとなる基本的な考え方や知識。

1         予算案が否決されて、政府は苦しい立場に追い込まれた。

2         弁護士は依頼人の利益を守る立場にある。

3         教師という立場からは怒こらざるをえなかった。

4         経済学の立場から分析している。

(6) かれる……でてこなくなる。

1         この井戸は昔から水がかれたことがある。

2         花瓶の花がかれた。

3         彼は最近かれた演技ができるようになった。

4         かれた草に火がついて火事になった。

(7) 先……その時より後、将来。

1         この先は通行止めだ。

2         こんな成績では、先が思いやれる。

3         先の地震では大きな被害を受けた。

4         荷物の送り先をまちがえた。

(8) さっぱり……後に何も残らない様子。

1         山頂に立った瞬間、今までの苦労はさっぱり消えてしまった。

2         仕事にはさっぱりした服装で行ったほうがいい。

3         暖冬でストーブの売れ行きはさっぱりだ。

4         暑い日はさっぱりしたものが食べたくなる。

(9) ひびく……影響する。

1         卒業式のとき校長先生の言葉は胸にひびいた。

2         このマンションの廊下は音がひびくので、静かに歩いてください。

3         野菜の値上がりは、家計にひびく。

4         彼の画家としての評判は世界中になりひびいている。

(10) 従う……沿って進む。

1         国王に従って外国を訪問した。

2         川の流れに従って歩いていくと、森に着く。

3         医者の指示に従って、手術を受けることにした。

4         年をとるにしたがって、足が弱くなる。

 

 

二 読解・文法

問題I 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1234から最も適当なものを一つ選びなさい。

 わたしももう48歳で「お若いですね」とお世辞を言われるような年頃になった。もちろん、そのようなお世辞はたいてい聞き流すが、ときには「若くないよ。昔なら人生50年、もうすぐ終わりだ」と言い返すこともある。そのようなことを言われはじめるのは、人びとにわたしが老人と見られはじめたということに過ぎないからである。

 それは、自分が自分を見る場合にも言えることで、「自分は()」と思いはじめたら、それは()しるしなのである。実際、若い人は「自分はまだ若い」なんて思っていないし、むしろ「もう歳だ」というようなことを言いたがる。それが老いはじめると「自分は若い」と言い出すわけで、たいていの老人は自分は実際の年齢より若く見えるし、たとえ若く見えなくても本当は精神的にも肉体的にも若いと信じている。自分は実際の年齢よりも老けていると思っている老人にお目にかかったことはまだない。

 たしかに老化の進み具合は人によって異なり、年齢の進み具合と必ずしも一致しないが、ほとんどの老人が実際の年齢より若いということは論理的におかしな話で、それなら、実際の年齢通りに老けている老人のほうが例外だということになったしまう。そんな馬鹿なことはない。老人がそう思っているのが希望的観測に過ぎないことは明らかで、自分の状態よりもさらに、老けている状態を勝手に「年齢相応」と決め込み、それと自分を比較しているに過ぎない。

 つまり、老人になればなるほど自分は若いと思いたがるわけで、したがってこのことから当人の老化の程度を判定できるのではないかと私は考えている。かりに老化指数という言葉を使えば、(老化指数)=(暦年齢)=(当人が思っている年齢)という方程式が成り立つ。たとえば、15歳の人が自分はもう一人前のおとなで、20歳でとおると思っていれば老化指数はマイナス52歳の人が自分は20歳程度と思って老化指数は0.40歳の人が35歳程度と思っていれば560歳の人が50歳程度だと思っていれば10である。ここに自分は50歳と変わらないと思っている70歳の人と、自分は60歳ぐらいには見えると思っている同じく70歳の人がいるとすれば、老化指数は前者が()、後者は()で、前者のほうが二倍もより老化しているわけである。「近頃の若者は」なんて言うと老いた証拠と笑われるかもしれないが、近頃の若者には、はたちを過ぎたばかりなのにもう「おじん」または「おばん」になったと嘆き、10代に見られたがるものがいるが、22歳の者が自分は歳に見えると思っているとすれば老化指数は20代にしてすでに4になる。近ごろ、そういう若者が多いということは、一方では若者の幼児化が言われてはいるが、他方では早くから精神的に老け込んでいる証拠ではなかろうか。

                         (岸田秀『不惑の雑考』による)

(注1)「もう歳だ」:「もう老人だ」

(注2)老化指数:老化の程度を示す数字

(注3)暦年齢:実際の年齢

(注4)おじん:おじさん

(注5)おばん:おばさん

1 「言い返すこともある」とあるが、なぜだと考えられるか。

1         お世辞を言われるような年頃になったから

2         自分の人生はもうすぐ終わりだと考えたから

3         老人と見られはじめことを意識させられるから

4         お世辞を聞き流すのは相手に失礼だと思ったから

2 ()と()に入る組み合わせとして、最も適当なものを選びなさい。

  1  もう歳だ      若い

  2  もう歳だ      老人になった

  3  まだ若い      若い

  4  まだ若い      老人になった

3 「自分」は、だれを指すか。

1         老人

2         筆者

3         若い人

4         お世辞を言う人

4 「そんな馬鹿なこと」とは、どのようなことか。 

1         老化の進み具合は人によって異なること

2         精神的にも肉体的にも自分はまだ若いと信じていること

3         実際の年齢通りに老けている老人が例外になること

4         年をとると、「若いですね」とお世辞を言われること

5 筆者が(老化指数)=(暦年齢)=(当人が思っている年齢)という方程式が成り立つ」と考えたのは、なぜか。

1         人によって体力のおとろえ方が異なるから

2         老化が進むほど人は若いと思いたがるから

3         ほとんどの老人が暦の年齢より若いから

4         年齢相応の老け方を決められないから

6 ()と()に入る組み合わせとして、最も適当なものを選びなさい。

  1  5       10

  2  10      5

3  10      20

  4  20            10

7 「老化指数」によると、次のうち最も老化していると言えるのはどれか。

1         自分が20歳だと思っている30歳

2         自分が35歳だと思っている40歳

3         自分が40歳だと思っている30歳

4         自分が45歳だと思っている40歳

8 「近頃の若者」について、筆者が最も指摘したかったことは何か

1         精神的に幼児化している。

2         精神的に老け込んでいる

3         若く見えるようになった。

4         老けて見えるようになった。

問題II 次の文章を読んで、後の問に答えなさい。答えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。

 重苦しいほどむし暑い晩だった。

 空には星一つなく、海は不気味に静まりかえっている。

 私はいつものように、後甲板の方へ歩いていった。後甲板には先客が一人いた。デッキの手すりにもたれ、その男はしきりに暗い海をのぞきこんでいる。

「今晩は」

と私は声をかけた。

ふりかえった男の顔は骸骨のように痩せ細っていた。眼が落ちくぼみ、顔色がひどく蒼白い。

「今晩は……」

 男は低くしゃがれた声でそう云うと、薄い唇をゆがめて笑った。

 私は男の隣に歩み寄って、同じように暗い海をみつめた。海はいつでも私をものの衰しい気分にさせる。海の中にいる誰かが呼んでいるような……。

 「いやな晩ですね。」

 と私は云った。

 「そうですか……

 男は骨ばった長い指で髪の毛をかきあげた。

 「ぼくはこんな晩の方が好きなんですよ。なんとなく、不気味で面白いじゃありませんか」

 私は変わった男だなと思った。私が黙っていると、彼は問いかけてきた。

 「この船に幽霊が出るという噂があるんですが、知っていますか?」

 「幽霊?」

 と私は訊き返した。

 「ええ、やはりぼくたちみたいな客の一人が、自殺したことがあるんだそうです。こんなふうに重苦しくて、風のない晩だったと云いますよ。その男はしばらく海を眺めていて、ふいに飛びこんだんです。ちょうどここから、今、ぼくらがこうしているところからね……」

 男は私の顔をのぞきこむようにして、にやりと笑った。

 「あがった屍体は、右の腕がなかったそうです。スクリュウに切りとられたのかもしれませんね」

 二人は暗い海にほの白く泡だっているスクリュウのあとをしばらくみつめた。

 「それで、その幽霊が出るんですね」

 私の声は少しふるえているような気がした。

 「ええ、自分の失った右腕をさがしているのだという噂です。こういうふうにむしむしして、海が妙に静まりかえった晩、男が一人でその海を眺めている。そしてしばらくするとふっと消えてしまうのです」

 男は自分自身をかき消すようなしぐさをした。

 「なぜ、その男が自殺したのか知っていますか?」

 と私は訊いた。

 「()、なんの原因もないんです。金に困っているわけではなく、失恋したわけでもなかった……」

 眉をひそめ、男は遠い所をみる眼つきで海をみつめた。

 「多分……」

 と云って男は口ごもった。

 「多分、呼応みを見ているうちに、なにもかもいやになったのでしょうね。そして、ひきずりこまれるように、飛びこんだのでしょう。ぼくには、その気持ちがわかるな。こうしていると、なにもかも忘れて、この海の底で眠りたくなる。あなたは、そう思いませんか?」

 私は海をみつめた。海は暗くて、静かに私を呼びかけているように思えた。

(注1)後甲板: 絵がある。

(注2)骸骨のように痩せ細った:非常に痩せた

(注3)屍体:死体

(注4)私を呼びかけている:通常は「私に呼びかけている」

l         ここまで読んで、次の間1から問4に答えなさい。

1 そうですか……」の意味に最も近いものは、どれか。

1         私もそう思います

2         私はそう思いません

3         私は夜が嫌いです

4         私も夜も嫌いじゃありません

2 ②「この船に幽霊が出るという噂」とあるが、この噂によると幽霊はどんなときに出るか。

1         むし暑くて海の静かな晩

2         もの衰しい気分にさせる晩

3         海がほの白く泡だっている晩

4         自殺したいと思っている客がいる晩

3 ③「男が一人でその海を眺めている」とあるが、それは何のためか。

1         自殺するため

2         自分の右腕をさがすため

3         幽霊が出るのを待つため

4         海の中にいる誰かを呼ぶため

4 (④)に入る適当なことばを選びなさい。

1 それを  2 それで  3 それに  4 それが

上の文章(45ページの文章)の後には、次の文章が続きます。最後まで読んで、下の問5、問6に答えなさい。

「そうなのです」

ため息を吐きながら、私は云った。

「それで、あの晩私は飛びこんだのです。」

私の右腕がないのに男が気づいたのは、その時だった。

(生島治郎「暗い海暗い声」)

5 ⑤「あの晩私は飛びこんだ」のは、なぜか。

1         借金と失恋で生きる希望をなくしたから

2         自分の失った右腕をさがそうと思ったから

3         すべてを忘れて海の底で眠りたくなるかったから

4         海の中の幽霊に呼ばれたような気がしたから

6 次の「幽霊」について述べたもののうち、正しいものを選びなさい。

1 「私」が幽霊だった

2 甲板にいた男が幽霊だった

3 甲板にいた男と「私」が幽霊だった

4 幽霊は出てこなかった

問題III 次の(1)~(7)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして最も適当なものを、1234から一つ選びなさい。

1)言葉は時代と共に変る。今の若い女性の中には平気で男言葉で話す人も多い。男性が語尾に「よね」をつけて話したり、女言葉に近づいてもいる。男女の言葉の差は昔に比べれば少なくなっている。今の時代の男女の生き方を象徴しているのでもあるだろう。そんな中で「男言葉」「女言葉」を守ろうというのではない。時代の流れに任せてもなお自然に残るのではないかと思うのだ。口に出す時ちょっとした抵抗感が歩かないかという形で。その感覚を大切にしたい。それが日本語の中の文化であり味わいであるかもしれないと思う。

(山根基世「日本語の味わい」)

〔問い〕この文章で、筆者はどのようなことをいおうとしていると考えられるか。

言葉の男女差

1         将来、残らないだろう。

2         今後もなくなってほしくない。

3         今日では、意識されていない。

4         しだいに大きくなっていくだろう。

2)旅行に出かける理由はいろいろありますが、一番の喜びは、旅先での解放感ではないでしょうか。この解放感は、自分を知っている人が誰もいないという心理に起因します。つまり、自分が恥をかいたり、失敗したり、あるいは、破廉恥なことをしても、そのことで後々困ることは起こらないと思うからです。

旅先にいる私は、家庭や職場の私ではなくて、どこの誰かわからないような匿名性をもった、一人の人間なのです。

このように、自分を見つめることを忘れ、他人から批判される懸念も薄れ、恥とか罪とかによる自己規制も弱まり、いつもならしないような行動をとることを、没個性化現象と言います。こうした没個性化は、大勢の見知らぬ人々の中にいる時や群衆の中にいる時、自分が誰だか人に分からないような時に現れます。

(渋谷昌三『心理おもしろ実験ノート』による)

(注1)破廉恥なこと:道徳的にしてはならないこと

(注2)匿名:名前を隠すこと

(注3)懸念:心配

〔問い〕没個性化現象」はどんな時に生じるか。

1         解放感が失われた時

2         自己規制が強まった時

3         匿名性が保たれている時

4         批判される懸念が生じた時

3 いうまでもなく、木々の葉の緑を見るとき、その葉には緑“色”という“物”がついているのではない。ある一定の状態の光の中で、その葉を前にしてもつ視覚的な体験のある種のあり方を、人は緑という“色”を見る。“色”は人の()にあるのではなく、人の側にあるものなのだ。“色”とは、この地上で人が外界に対してもつ視覚的な対応の仕方の一例であり、それは人の内側で起こる出来事の一例なのである。それに対し、“形”や“動き”となると、そのあり方の把握は人の()でのことであるとはいえ、基本的には人の()で起こっている出来事であるといえるだろう。

(西江雅之「色をあらわす言葉」)

〔問い〕 )~()には、「内側」か「外側」が入る。その組合合わせとして最も適当なのを選びなさい。

1 外側   内側  外側

2 外側   外側  外側

3 内側   内側  内側

4 内側   外側  内側

 (4) 次の文章は大学進学率に関する、1965年から1990年までの5年ごとの調査結果について述べたものです。

   大学への進学率は全体で見ると、75年までは急激に伸びた。しかし、75年を境にして伸びは止まり、ほぼ一定の状態がこの15年ほど続いている。

   男女別に見て見ると、75年以降、男子の進学率はやや下降する傾向を示しているのに対し、女子の進学率はその伸びは鈍くなったが少しずつ上昇を続けており、90年には男子の進学率より高くなった。

〔問い〕次のグラフの中から、この文章に合うものを選びなさい。

  (5) ある言語が豊かさを獲得するのは、小さな村落や島に、純粋に保存されることによってではなく、できるだけ多くの異なる背景をもった人たちによって、できるだけ多くの異なる場面で、多様な目的のために用いられることによってである。そうでなければ、ことばは〔      〕。

 〔問い〕この文章の〔 〕の部分には、どんな内容の表現を入れることができるか。

1         獲得されない

2         用いられない

3         純粋にならない

4         豊かにならない

  (6)税に関する本を読んでも、最近の世界の税制改革を調べても、望ましい税の条件としてまっさきにあげられているのが負担の公平です。「公平」とは、とりあえず、国民がそれならば負担してもよい、負担するのもやむをえないと考える税負担の決めかた理解しておいてください。それでは、なぜ公平なのか。納税が義務、つまり強制だからです。寄付のように自発な負担なら、負担の決めかたが不公平だと思えば寄付を断ればよいのです。したがって、公平だと思う人だけが頼みに応じて負担する寄付はつねに公平です。ところが強制的な税の場合はそうはいきません。負担の決めかたが不公平だと思っても、納税は拒否できないのです。

                       (宮島洋『税のしくみ』による)

〔問い〕「なぜ公平なのか」というのは、別の表現で言うと、この場合、次のどれに近いか。

             1 なぜ公平になるのか。

             2 なぜ公平だと言えるか。

税負担が       3 なぜ公平になりにくいのか。

           4 なぜ公平でなければならないのか。

7)自然現象を説明する主な仕方に、万物を生き物になぞらえて説明するやり方と、すべてを機械になぞらえて説明するやり方の二種類がある。前者を有機体論、後者を機械論という。科学の発達をおおざっぱにいえば、昔は自然を、世界を生き物としてとらえる考え方が(➀)が、近代、17世紀からとくに万物を機械論で説明する機械論的自然観が定着し、そのなかから近代科学を生み出してきて、今日にいったている。動物や人間の身体も、機械のように見なしてかなりうまく説明がつくのである。

   しかし昔はそうではなかった。自然万物を生きとし生けるものと見なした。生き物の方が無機物よりずっと親近感があったからである。生きて活発に動くものの方が、鈍で動かないものよりずっと印象的だったからである。

〔問1〕この文章の(➀)に入る適当なことばを選びなさい。

   1 強かった  2 特別だった  3 不十分だった  4 めずらしかった

〔問2➁「昔はそうではなかった」とあるが、どういうことか。

1         自然現象に関心を持たなかった。

2         世界を生き物として考えなかった。

昔は       3 人間を機械とみなすことはなかった。

         4 無機物については説明できなかった。

問題IV 次の文__にはどんな言葉を入れたらよいか。1234から最も適当なものを一つ選びなさい。

 (1)太陽と__永遠に輝いているわけではない。いつかは消え去るときが来る。

   1 いえども 2 いったらば 3 いえばこそ 4 いったからには

 (2)彼の栄光は、きびしいレースを勝ち__末に獲得したものだ。

   1 ぬいて  2 ぬく    3 ぬいた   4 ぬき

 (3)小さい頃、よく泥__になって弟とけんかをしたものだ。

   1 ずくめ  2 まみれ   3 ばかり   4 みずく

 (4)喫茶店で、となりの席の話を聞く__聞いていたら、私の会社のことだったので驚いた。

1         ばかりか 2 のみならず 3 ともなしに 4 どころではなく

 (5)子どものころ、死については__だに恐ろしかった。

   1 考え   2 考えた   3 考えて   4 考える

 (6)あの時もっとがんばっていれば、と後悔しみた__で、今更しようがない。

   1 の    2 もの    3 こと    4 ところ

 (7)あの人は話好きで、目が__最後、最低30分は放してくれない。

   1 あったの 2 あったが  3 あうのに  4 あったから

 (8)他人を犠牲にする__なしに、個人の望みを達成することは困難だと考えている人もいます。

   1 の    2 こと    3 もの    4 ところ

 (9)あそこの家の父親は、毎日朝から酒を飲んで暴れている。息子は、仕事もせずに賭けごとに夢中になっている。まったく、父も父__子も子だ。

   1 と    2 では    3 なら    4 にして

 (10)「考えてみます」と言われたので、了承されたと__、実はそれは「お断りします」という意味だった。

   1 思いゆえ 2 思っても  3 思ったり  4 思いきや

 (11)この困難な任務を果たせるのは、彼__おいてはほかにはいない。

   1 を    2 は     3 に     4 で

 (12)環境問題の解決策を__、熱心な議論が続いている。

   1 通じて  2 めぐって  3 まわって  4 こめて

 (13)この問題については、あなた__お考えがおありでしょうが、ここのところは私の言うとおりにしてください。

   1 向きの  2 なみの   3 次第の   4 なりの

 (14)その赤ん坊は、私が抱き上げたら今にも泣き__ばかりの顔した。

   1 出す   2 出さ    3 出さん   4 出した

 (15)彼はとても忙しいらしい。食事__が早いか、すぐに飛び出していった。

   1 とる   2 とり     3 とって  4 とろう

 (16)詳しくお話を__から出ないと、お答えできません。

   1 うかがい 2 うかがう   3 うかがった4 うかがって

 (17)自分のことだけではなく、相手の立場に立って考えることのできる人、それが大人という__だ。

   1 もの   2 ひと     3 ほう   4 ところ

 (18)彼は読書が好きだが、読んだそば__何を読んだか忘れてしまい、同じ本を何冊も買ってしまう。

   1 で    2 から     3 に    4 まで

 (19)経済問題の解決には、政府や企業の対応もさること__、消費者の態度も重要な要素となる。

   1 ながら  2 であり    3 でなく  4 とともに

 (20)徹夜は__、せめて夜12時くらいまで勉強したほうがいいんじゃないですか。 

1         するほどで 2 するまでも 3 しないほどで 4 しないまでも

 (21)とにかく事故現場をこの目で__ことには、対策はたてられません。

   1 見た   2 見る     3 見ない  4 見なかった

 (22)チンパンジーは人間の模倣を__のみならず、互いに協力共同作業をしているらしいという報告もある。

   1 して   2 する     3 せず   4 しまい

 (23)実際に読んでみて__、古典のおもしろさを知った。

   1 はじめ  2 はじめで   3 はじめて 4 はじめると

 (24)半導体に対する需要は、ここ数年、以前__もましく高まっている。

   1 まで   2 から     3 で    4 に

 (25)お世話になった先生に頼まれた__、ことわるわけにはいかない。

   1 からには 2 からでは   3 までには 4 まででは

 (26)「これが最近書いた本なんですが、あなたにさし上げますから、どうぞお読みください。」

    「はい、__いただきます。」

1         拝見して 2 ご覧になって 3 拝見させて 4 ご覧にならせて

 (27)「先生の奥様はどの方かご存じですか。」

   「あそこの__を召しているいらっしゃるご婦人です。」

   1 年    2 お年     3 年齢   4 お年齢

問題V 次の文の__にはどんな言葉を入れたらよいか。1・2・3・4から最も適当なもの一つ選びなさい。

 (1)帰国する日にパスポートをホテルに置き忘れてくるなんて、いかにも彼の__。

   1 やるべくことだ     2 やりたいことだ

   3 やりそうなことだ    4 やるらしいことだ。

 (2)不景気になってからというもの、長年、会社に貢献してきた人でさえ、会社を__。

1 やめさせるまでもない  2 やめられないですむ

3 やめさせられている   4 やめないではおかない

 (3)運転手が教えてくれたからよかったものの、もう少しで大切な卒業論文をタクシーの中に__。

   1 忘れるところだった   2 忘れるところだろう

   3 忘れないところだった  4 忘れるところではなかった

 (4)彼は生活に困っているというから、お金を貸したのに、そのまま姿を消してしまい、今となっては__。

   1 あきらめきれない    2 あきらめかねない

3 あきらめるまでもない  4 あきらめるほかない

 (5)慎重なあの人に限って、そんなミスを__。

   1 おかしてばかりいる   2 おかすはずがない

   3 おかさないではいられない4 おかそうとしている

 (6)苦難に満ちたあの人の人生は、涙なくしては__。

   1 語る  2 語らない  3 語れる 4 語れない

問題VI 次の文の__にはどんな言葉を入れたらよいか。1234から最も適当なもの一つ選びなさい。

 (1)ノーベル賞を受賞した氏は、少年時代、劣等生だったという。あの人__そうなのだから、わが子が劣等生だからといって深刻に悩む必要がない。

   1 だけが  2 にとって  3 にして  4 ともなると

 (2)わたしは子供のころから物事を決めるのが遅くて、ずっと悩んできた。たとえば友達に旅行に誘われても、__、すぐに返事をしないで、いろいろ考えているうちに時間がたってしまう。いつのまにか友達もあきらめ、旅行はとりやめになってしまう、残念に思うことが多い。

1         行きたくないわけではないが

2         行きたくないから

3         行きたいわけではないが

4         行きたいというより

 (3)これからの日本人は、国際人をめざすべきだという人もいる。しかし、日本に対する客観的な視点が欠けている人は国際人をめざす__、国際という言葉を口にする資格すら疑わしいのではないか。

   1 どころか  2 からして  3 ばかりか  4 ゆえに

 (4)小さな個人商店を世界的な企業にまで成長させたH氏は、自分の人生を失敗の連続だったと語ったことがある。氏のように失敗に耐えられる__、成功は望ましいということを改めて思い知らされた。

   1 ばかりだと  2 ぐらいでないと

   3 ぐらいだと  4 までもないと

 (5)子供の立場を考えずに、一方的に子供をしかりつける親もいる。だが、親は子供をただ__。親子の関係は信頼関係に支えられているのであって、それなしには、子供は親に反発するだけである。

1         しからないともいえない

2         しかるよりほかにはしかたがない

3         しからないではいられない

4         しかればよいというものではない

 

 

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